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公益財団法人 建築技術教育普及センター
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韓国の建築士制度

建築技術者教育研究所 研究員/熊谷雅也

 韓国は、日本の一番近くにある外国として、我が国と密接な関係をもつ国のひとつです。これからも、アジアにおける重要なパートナーとしての関係を築いていくための努力が必要とされています。
 今回は、約10万平方キロメートルの国土に歴史ある、独自の文化を持つこの国の建築士制度について紹介します。

「建築 普及&資格」NO.7(1996年)より

1 韓国の建築士制度

 韓国の建築士制度は、1963年に制定された「建築士法」に基づくものです。この法律は、建築士の資格及び業務に関する事項を規定したもので、建築士の資格は、この法律に規定された、建設交通部長官が実施する建築士資格試験に合格し、建設交通部長官の免許を受けることにより、得ることができます。
 1977年の制度改正以前には、建築士は一級建築士と二級建築士の2つの等級がありましたが、この改正以降は「建築士」のみが規定されています。建築士の総数は1994年11月時点で8,000人余りで、比較的希少性の高い資格になっていると言えます。
 1995年1月に建築士法が改正され、制度に変更が加えられました。以下では、この制度の改正をはじめ、韓国の建築教育、建築士制度について紹介します。

2 韓国の建築教育制度

 韓国の教育制度は、6年制の国民学校、中学校3年、高等学校3年を修了した後、高等教育機関へ進学する形を中心にしています。義務教育は国民学校までですが、ほぼ全員が中学校に入学し、約99%が高等学校に進学します。
 高等教育機関における、建築に関する専門教育は、主として、建築関連中堅職業人を養成する2~3年制の専門大学、建築家や建築技術者を養成する4年制の大学及び高級専門家を養成する大学院で行われており、ほとんどの学科が工科大学(総合大学の工学部及び工科系単科大学に相当)の建築学科、建築工学科に属しています。大学院は学術研究を目的とする「一般大学院」と高度職業人の養成を目的とする「専門大学院」の二元体制をとっています。「専門大学院」は社会人を対象に主に夜間を中心に開講されていますが、近年開設数が増加し1994年までに建築系では21の専門大学院が設置されています。
 韓国の高等教育は、19世紀後半からアメリカのキリスト教宣教団が教育機関を開設してきたこと、教員の多くがアメリカへの留学経験者であること等により、アメリカの影響を強く受けています。
 しかし、大学の建築学科等における建築の専門教育は、日本の大学と比較的類似したカリキュラムによっています。建築系学科のほとんどが工科大学に属しているのも、戦前の建築教育機関が日本と同様に工学系に属していた影響によるためといわれています。
 1970年代より行われた「実験大学方式」を初めとした大学の制度改革以降、現在ほとんどの4年制大学では、卒業に必要な学点(単位)は140学点とされており、その内訳は、3割を占める一般教養科目、専攻科目(専攻必須及び専攻選択)と一般選択科目で構成されています。全国4年制大学の専攻科目開設学点数を平均すると102学点となりますが、これを各科目分野別の内訳でみると設計・意匠が39%(うち設計・製図が20%)、構造・力学20%、施工・材料14%、歴史・建築論10%、環境・設備が9%、都市・団地・造景8%の割合となります。

3 技術者の資格制度

 大学の建築学科、建築工学科を卒業後、取得できる技術系の資格としては、先に挙げた建築士法に基づく建築士の他に、1973年に制定された国家技術資格法に基づく技術資格があります。
 現在、国家技術資格法が対象としている技術資格は、技術系、技能系、サービス系の3系列に大別されており、技術系では、技術士、技士一級、技士二級の三等級に分かれています。専門大学を卒業すると技士二級の、4年制大学を卒業すると技士一級の受験資格を得ることができ、技士一級取得後7年の実務経験を経た後、技術士の受験資格を得ることができます。
 また、建築関連分野(建築、土木、電気、機械、化工、窯業、通信、環境、エネルギー、国土開発、安全管理等)で技士資格を取得するか、「建築士予備試験」に合格した後、建設交通部長官に申告したものは、建築士法による「建築士補」となることができます。
 「建築士予備試験」は、大学卒業や、専門大学卒業後2年以上の実務経験を有すること等により受験資格を得ることができます。

4 建築士制度の概要

 韓国の建築士制度は、建設交通部が主管する「建築士法」に基づき形づくられています。以下では建築士法に沿う形で、建築士制度を紹介します。

建築士の定義

 この法律では、建築士は建設交通部長官の免許を受け、建築物の設計又は工事監理を行う者とされています。免許を受けた者には免許証と免許手帳が交付されます。建築法の規定により、大統領令で定められた建築物の建築等のための設計や監理は、建築士でないと行うことができません。また、建築士でない者が、建築士またはこれと類似する名称を使用することはできません。

試験

 建築士の免許を受けるためには、建築士資格試験に合格する必要があります。
 建築士資格試験は、設計及び工事監理に必要な知識及び技術に関して行われ、建設交通部長官が施行します。
 受験資格は、建築士予備試験合格または建築分野技士一級資格取得の後7年以上建築に関する実務経験を有する者、建築分野技術士資格取得者、建築士予備試験合格または建築分野技士一級取得後5年以上建築士補として勤務した者、外国の建築士等資格を取得した後通算5年以上建築に関する実務経験のある者に与えられます。最後の外国の建築士等資格を取得後受験する者については、試験の一部が免除される場合があります。
 試験の科目は、建築士予備試験の科目が建築構造、建築施工、建築計画となっており、建築士資格試験では、建築法規、建築設計となっています。

業務

 建築士は、建築物の設計、工事監理の他、建築物の調査、鑑定に関する事項、建築物の現地調査・検査を業務として行うことができます。
 また、法により業務上の誠実義務として、建築物が法令に適合し、安全・機能及び美観に支障のないよう業務を誠実に遂行することが求められており、業務の遂行に際して、故意または過失により建築主に対し財産上の損害を与えた場合は損害を賠償する責任が、建築士法に明記されています。

建築士事務所

 建築士が建築法の規程に基づき設計や工事監理の業務を行おうとするときは、建築士事務所を開設して建設交通部長官に登録しなければなりません。この登録は5年毎に更新しなくてはいけません。

建築士協会

 韓国には、建築関連の団体として、大韓建築士協会(KIRA)、韓国建築家協会(KIA)、大韓建築学会(AIK)があります。このうち大韓建築士協会は建築士法に基づき設立された団体で、建築物に関する調査研究、建築物の品質及び施工技術の向上のための指導、建築士業務の改善、発展、会員の品位保全及び倫理確立、建築士及び建築士補の資質向上のための研修といった事業の他、会員の年金制度の運用や、業務上の損害賠償責任の保障や資金融資等といった共済事業も行えることが、建築士法上に定められています。

5 建築士法の改正

 先に述べた様に、最近では1995年1月に建築士法が改正されています。これまでに紹介してきた建築士制度は、この改正後の法律に沿ったものですが、建築士を取りまく最近の環境を理解する意味で、主な改正点を改めて紹介します。

建築士試験制度の改善

 これまで、建築士資格試験を受けるためには、例えば大学卒業後5年以上の実務経験の後、一次・二次試験を受験するようになっていましたが、大学卒業後すぐに「建築士予備試験」を受験できるようにし、その後5年以上の実務経験を積んだ後、実技中心の建築士資格試験を受ける形に改められました。受験者の負担を軽減するとともに、設計科目の配点を高くして、実務能力を持つ建築士を生み出して行こうとする目的のためです。

建築士事務所制度の改善

 これまで建築士事務所は、単独(建築士1人以上で開設し、中規模以下の建築物を設計できる)事務所と総合(建築士3人以上で開設し、全ての建築物を設計できる)事務所に区分されていましたが、この区分が廃止されました。これは、本来、多数の建築士が共同することにより技術能力を高めようとする目的がありましたが、実際は大規模な業務を行うために形式的に3人以上集まった形に形骸化しており、結果として事務所開業の際の規制となっているため、国際化・開放化に備えて規制を緩和することを意図しています。

建築士の業務遂行に伴う義務と責任の強化

 建築士が業務上、故意または重大な過失により、公共の危険を招くようになった場合は免許が取り消されることとなりました。また、先に述べた損害賠償責任も今回の改正で加えられたものです。

建築士協会運営の活性化及び自律化

 大韓建築士協会について、建築士に対する損害賠償責任が明文化されたことと並行して、協会が損害賠償責任を保障できることが法で定められるなど、業務の範囲が拡張されました。
 また協会の役員人事に対する建設交通部長官の承認を要する範囲が縮小される等、運営の自律化が進められました。

行政処分基準の合理的改善

 建築士法違反者に対する罰則の基準が強化されました。
 また、これまで建築士の免許証は5年毎に更新することとなっていましたが、行政の簡素化の意味で、建築士免許の更新制度は廃止され、替わりに、建築士事務所の登録について5年毎に更新するように改められました。

 急激な経済成長や国際化による環境の変動、長期にわたる軍人政権から文民政権への移行に伴う政策の変化や行政改革、連続して発生した大規模な事故の影響等により、韓国の建設事情や関連制度は大きな変革が続いています。今回は主に建築士制度の最近の状況について紹介しました。

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