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公益財団法人 建築技術教育普及センター
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建築設計資格制度の国際相互認証のためのフレームワーク概要

 (財)建築技術教育普及センター企画部企画課 佐藤景洋・山下典子

「QUA クウェイ」NO.13(1999年)より

 現在、WTO(世界貿易機構)では、サービス貿易を含む貿易の自由化は国際的な課題であり、我が国でも重要な課題として取り組まれつつあります。建築設計・監理サービスも例外ではなく、建築制度の海外進出と参入の両面で国際的に円滑かつ適切に通用・対応できるようにすることが必要とされ、その具体的方策として他国の同種資格制度との相互認証に向けた対応が求められています。
 そこで、来るべき二国間あるいは多国間交渉に備え、我が国建築士制度の特性を適切に踏まえた、建築設計資格を相互に通用させるためのフレームワークと付随する諸条件の整備に向けた検討を行うことを目的とし、平成9年度及び平成10年度に建設省住宅局からの委託を受けて、当センターでは「建築設計資格者制度の国際相互認証のためのフレームワークの検討調査」を進めて参りました。検討調査には、幅広い視点からの意見、提案等が得られるよう当センター内に学識経験者、建築関係団体(*1)、建設省建築指導課等で構成される検討委員会及び幹事会を設置し、平成11年3月に最終報告書を取りまとめました。今回はその内容を簡単にご紹介いたします。
 日本の建築士は、一般に海外の建築家およびエンジニアの性格をあわせ持つ資格であり、対応すべき分野がUIA(International Union of Architects:世界建築家連合)で議論されている、設計に従事している「建築士(アーキテクト:建築家)」にかかるものとAPEC(Asia Pacific Economic Cooperation:アジア・太平洋経済協力会議)で議論されている「エンジニア」にかかるものとがあるため、この委員会では、アーキテクトとエンジニアに分け調査検討を行ないました。

建築家の国際相互認証

 現在、UIAでは、アーキテクトの相互認証の二国間あるいは多国間交渉時に活用すべく推奨基準に関する協定と個別ガイドラインが作成されつつあります(*2)。例えば、推奨基準(案)には、「認定/認可/承認を受けた大学の全日制の認定/認可/承認された建築課程における、最低5年以上の教育を受ける」、「建築を選考する卒業生には少なくとも2年間(今後3年間になる可能性もある)にわたる一定水準を超える経験/訓練/インターン制を終了することが必要となる」、「建築家は提供する専門業務を完全に遂行する能力を持つことを保証しなくてはならない」等が考えられています。
 委員会では、現行の建築士制度の国際対応の視点から、UIAアーキテクト推奨基準(案)に満たない要件について教育要件では、実務経験年数等で補うなどの同等水準になるようにする条件を議論し、二国間の相互認証の基本スキームを次の通り整理しました。

(1)日本の建築士を相手国に受け入れ認証させる場合

  • 日本の一級建築士で相手国の建築家の資格取得を希望する者は、国内で「UIAアーキテクト推奨基準と同等水準」であるかどうかの評価を受け、同等と認められる証明を得る。
  • 日本国内で同等証明を得た一級建築士は、相手国により、「相手国側の付帯条件」を満たした上で建築家の資格を与えられる。

(2)相手国側の建築家を日本の建築士として受け入れ認証する場合

  • 相手国の建築家制度がUIAアーキテクト推奨基準を満たしている場合、日本の一級建築士の免許取得を希望する相手国の建築家は、建築士法第4条第3項の規定に従い建設大臣に申請する。
  • 現行の建築士法第4条第3項の運用基準に、必要に応じて新たに「UIAアーキテクト対応基準」を設けることも検討する。

エンジニアの相互認証

 APECでは、1994年オーストラリア主導で開始したHRD-WG(Human Resources Development Working Group:人材育成ワーキンググループ)で資格の相互認証についての議論が急速に進んでおります。我が国ではAPECエンジニアの審査登録機関となる国内モニタリング委員会が既に設置され、7月(*3)に日本で国際エキスパート会議が開催されました。
 APECエンジニアの登録対象となる建築関連技術者としては、一級建築士、建築構造士、建築設備士、建築積算資格者、建築施工管理技士等が考えられますが、1998年11月のシドニーで開催された運営委員会で相互承認の対象となった技術9分野のうち、日本からは当面、土木(CIVIL)と構造(STRUCTURAL)の分野で調整に参加することが表明されました。建築関連では、構造分野の登録となります。選定の対象者としては、一級建築士でAPECエンジニア要件(*4)を満たす構造設計技術者または建築構造士でAPECエンジニア要件を満たす者となります。
 また、今後国内での調整がまとまれば、建築分野としては「機械(MECHANICAL)」または「電気(ELECTRICAL)」に対応する資格として、建築設備士を選定の対象とすることが考えられられます。基本スキームとしては、以下のように取りまとめました。

(1)日本の建築士(技術者)等を相手国に受け入れ認証させる場合の手順

  • 日本の一級建築士等でAPECエンジニア資格取得を希望する者は、国内モニタリング委員会で審査され、認められた者はAPECエンジニアとなる。
  • 日本国内でAPECエンジニア資格を得た一級建築士等は、相手国により、「相手国側の付帯条件」を満たした上で相手国のエンジニア資格を与えられる。

(2)相手国側のAPECエンジニアを日本の建築士として受け入れ認証する場合の手順

  • 日本の一級建築士の免許取得を希望する相手国のAPECエンジニアは、建築士法第4条第3項の規定に従い建設大臣に申請する。
  • 現行の建築士法第4条第3項の運用基準に、必要に応じて新たに「APECエンジニア対応基準」を設けることも検討する。

まとめ

 以上のように、建築設計資格制度の国際相互認証のための枠組みづくりを目的に、現行の建築士制度を諸外国の建築家及び技術者制度あるいはUIA推奨基準やAPECエンジニア制度と比較した上で、国内側の立場で具体的にどのように対応すべきかを現時点で共通に認識できる考え方について整理してきましたが、「日本国内で行う「UIAアーキテクト/APECエンジニア基準との同等証明」の基準と相手国側の建築家・エンジニア資格の内容が相互に妥当かどうか」、「一級建築士の免許を相手国の建築家・エンジニアに与える際の日本側の条件(建築士法第4条第3項の運用基準)と相手国の建築家・エンジニアの資格を得るために相手国側が課す付帯条件が相互に妥当かどうか」等の検討事項がまだまだ多く、また今後の国際的な協議や調整をみつつ対応していく必要があります。
 今後、サービス貿易の自由化が進展する中で、安全で快適な建築物を求める国民のニーズに的確に応えられるよう、関係者の意見を調整しつつ、理解を促し協力しながら消費者、職能従事者ひいては国民全体の利益のため、資格の国際化やそれに伴う制度改善に取り組んで行くことがますます重要になってくることと考えています。(*5)

(*1) 建築関係団体
 (フレームワーク委員): (社)建築業協会、(社)日本建築家協会、(社)全日本建築士会、(社)日本建築士会連合会、(社)日本建築士事務所協会連合会、 (社)日本建築学会の関係者
 (オブザーバー委員): (社)建築設備技術者協会、(社)日本建築構造技術者協会の関係者

(*2)1999年6月の北京大会で建築実務におけるプロフェッショナリズムの国際推奨基準が採択されました。

(*3)1999年7月28~29日 第1回エキスパートグループ会合(東京)、11月にはシドニーで第2回(最終)プロジェクト運営委員会及び第1回調整委員会が開催予定。

(*4) APECエンジニア基本要件に対する我が国の登録要件(案)
 1) 認定または承認されたエンジニアリング課程を修了していること

  • 一級建築士資格を保有していれば自動的に教育要件を満たすものとみなす。

 2) エンジニアリング課程修了後少なくとも7年間の実務経験を有する

  • 現行の一級建築士受験要件のうち、「卒業後の実務経験要件が2年の課程(大学教育課程相当)を卒業していること」を満たす者は資格取得の前後は問わず通算7年間の建築構造に関する実務経験を有することが必要である。
  • 要件の審査は原則として申請者の申告をもとに行う。
  • 建築構造士は大学卒業後2年の実務経験と登録に1年間かかる一級建築士となってから最低4年の実務経験が必要であり、建築構造士は自然と7年間の実務経験を満たしているため、この項目の審査については簡易措置を設けることができる。

 3) 少なくとも2年間は、重要なエンジニアリング業務の責任ある立場での経験を有すること

  • 以下の業務経験の合計が2年間以上有する者が要件を満たしているものとして取り扱う。
    (1)建築物の構造設計に関し、責任ある立場または工事監理の責任者としての実務経験
    (2)その他上記に相当すると考えられる業務の実務経験
  • 上記の7年間の審査と同様、審査は原則として申請者の申告をもとに行う。

 4) 自己の判断で業務を遂行する能力があると当該エコノミーの機関から認められていること

  • 一級建築士は建築士法に基づく国家資格であり、試験を通じて能力審査を行っているとみなすことができるため、要件を満たすものとみなす。

 5) 継続的な専門能力開発を満足すべきレベルで維持していること

  • APECエンジニアに登録を申請する一級建築士は、継続的能力開発の状況について登録更新(5年間毎を想定している)時に審査される。
  • 「建築構造士」は5年毎の登録更新制を採用しており、継続的能力開発の審査は簡略化される。

(*5)APEC HRD-WGは来年2000年の体制スタートに向けて議論が進展する予定であり、その結果について別の機会にご報告させていただく予定です。

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