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公益財団法人 建築技術教育普及センター
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中国及び台湾のアーキテクト制度

現 人事院人材局次席試験専門官
前 財団法人建築技術教育普及センター
 建築技術者教育研究所
 主任研究員 西原憲一

「QUA クウェイ」NO.26(2003年)より

1 はじめに

 中国の注冊(=登録(※1))建築師制度については以前「普及&資格」No.4(1995年8月発行)で報告しましたが、試行を経て新制度が本格的に実施されていますので、その内容について紹介します。中国の建築師制度は、「技術職名制度」(1949年~1985年)、「専門技術職務の招聘制度」(1985年~1994年)を経て、「注冊建築師制度」を導入しました。この制度はアメリカのNCARB(全米建築家登録委員会協議会)などの協力も得て、国際的な傾向に一致させて、世界的にも通用する建築家の制度を確立し、建築活動を活発に進めていこうというものです。一方、台湾については2001年1月より建築師試験制度が一部改正されましたが、その紹介の小冊子を入手しましたので、主に建築師試験関連について紹介します。従前は建築師資格取得のためには、試験のほか審査制度がありましたが、この審査制度を廃止し、その主旨を試験の中に盛り込むというものです。

2 中国のアーキテクト制度

ア 注冊建築師

 中国では、アーキテクトを「注冊建築師」と呼び、これには1級と2級があります。1級は建築規模と工事内容の制限を受けずに全ての業務を行えるもので、2級は国の規定する民間用建築工事等級の3級以下に限定されています。この建築師は業務独占資格であり、業務範囲は(1)建築設計、(2)建築設計に関する技術指導、(3)建築物の調査及び鑑定、(4)本人が主体となって設計した建物に関する工事指導、監督、(5)国務院建設行政主管部門の規定によるその他の業務 となっています。

イ 建築師試験

 中国では1994年の試行を踏まえ、1995年より注冊建築師試験を実施しています。(1994年の試行より前に実施されていた建築師の資格制度は廃止されました(特例措置あり)。)1級は中国建設部で実施・登録し、2級は省、自治区、直轄市が実施・登録しています。1級注冊建築師は、毎年約2万人受験し、合格率は5%程度で、94年~99年の合格登録者の累計は約5,000人です(2000年2月の当センター職員による中国建設部に対する聞き取り調査)。
 1級注冊建築師の試験内容は、「建築計画、敷地設計、建築設計及び設計製図、建築構造、環境計画、建築設備、建築材料及び構造、建築コスト、建築施工及び設計業務管理、建築法規等とし、試験問題はこれらの内容を数科目に区分する」となっており、2級注冊建築師の試験内容は、「敷地設計、建築設計及び設計製図、建築構造及び設備、建築法規、建築積算及び建築施工等とし、試験問題はこれらの内容を数科目に区分する」となっています(注冊建築師条例実施細則第十二条)。1級注冊建築師試験の実際の試験科目は表1のとおりです。
 試験は年1回実施し、試験科目は順次受験が可能ですが、1級の試験科目の合格有効期限は5年で、2級は2年です。
 1級の受験資格は、(1)建築学科の修士取得者又は建築と密接に関連した学科(以下関連学科と略記)の博士取得者で、建築設計等の実務経験2年以上、(2)建築学科の学士取得者又は関連学科の修士取得者で、実務経験等3年以上、(3)大学の建築課程を卒業し5年以上の実務経験、あるいは、関連課程の大学課程を卒業し7年以上の実務経験、(4)上級技師の資格取得者で3年以上の実務経験、あるいは、技師の資格取得者で5年以上の実務経験、(5)設計上の優れた実績を上げた者で全国注冊建築師管理委員会が認定 のいずれかです。
 2級の受験資格は、(1)大学の建築課程又は関連課程を卒業し、2年以上の実務経験、(2)大学の建物建設設計技術課程又はその関連課程を卒業し3年以上の実務経験、(3)専門学校の4年にわたる建物建設設計技術課程を卒業し、5年以上の実務経験、(4)専門学校の建築関連課程を卒業し、7年以上の実務経験、(5)下級技師の資格取得者で3年以上の実務経験 のいずれかです。なお、認定された建築学科の履修年限は5年となっています。

■表1 1級注冊建築師試験科目

科目 時間 問題数
多枝選択式 事前設計 1時間 45問
敷地設計 1時間 45問
建築設計 3.5時間 160問
建築構造 3.5時間 140問
建築制御と建築設備 2.5時間 120問
建築材料と工事詳細 2.5時間 120問
建築の経済性、施工技術、設計管理 3時間 135問
製図 敷地設計 3時間 6問
建築設計 12時間 6問

ウ 免許の更新と継続教育

 建築師試験の合格者は、1級は全国注冊建築師管理委員会に、2級は省、直轄市等の注冊建築師管理委員会に登録を行います。登録の有効期限は2年で、続けて登録する場合は、30日以内に登録手続きを行う必要があります。1級注冊建築師の場合、免許の更新に当たり80時間以上の継続教育を義務づけています。このうち、40時間以上は、必修講習(全国注冊建築師管理委員会の条件に適合した指定機関の講習)であり、耐震、防火、性能など必須的事項についてテキストを指定して実施しています。残りの40時間以上は、選択課程の累積計算(単位換算)であり、具体的な教育課程として、指定機関講習、規定の選択科目の独自学習、学術会議の参加、学術論文の発表、建築専門内容の著述、建築師試験の採点、建築師試験の審査参加、問題作成等を挙げています。また、これらの記録は登録手帳に受講スタンプや証明書の添付により行います(当センター職員による聞き取り調査)。

3 台湾のアーキテクト制度

ア 建築師

 台湾では、アーキテクトを「建築師」(階級はない)と呼び、この建築師は業務独占資格です。建築師は、委託を受けて建築物及び現場環境の調査、測量、設計、監理、見積、検査、鑑定等の各種業務に従事し、委託者に代わって建築許可申請、応札、施工契約の締結及びその他の工事に関わる打ち合わせ事項を行います。構造設計と建築設計については、6階建て以上で一般の使用する建物や公共建築物では、専門技師に任さなければならないものがありますが(※2)、建築師は専門の技師とともに、関連の法律的責任を負います。
 さらに、設計事務所を開業するためには、建築師開業証明書を取得しなくてはなりません。その取得のためには、建築師資格取得後、2年以上の実務経験が必要であり、これをもとに開業建築師として申請・登録します。具体的には、実務経験を記した書類を添付して、建築設計事務所のある県又は市の主管機関に提出し、省の建設庁で審査、登録後発給されます。その後、事務所の住所変更、雇用している建築師や技術員に変更があった場合や事務所を閉鎖する場合には、速やかに届出が必要です。
 なお、建築師の職業を管理する法規は建築師法で、所管機関は内政部です。

イ 教育制度

 教育の系統は、国民小学(小学校)、国民中学(中学校)、高級中学(高等学校)、大学となっています。また、国民中学から高級職業学校(工業高校等)や専門学校へ進学する系統もあります。建築教育のフローチャートを示すと図1のようになります。 建築教育を行っている大学の修業年限は基本的には5年(一部4年あり)で、修士は2年となっています。一方、専門学校は国民中学卒業以上を対象にしたものは6年(他学科では5年が主流)、高級職業学校を卒業したものは3年となっています。

ウ 建築師試験

 建築師高等試験は、専門職及び技術者試験法により規定されている資格試験の一つで、多くの資格試験を実施している考選部が実施しています。以前は建築師審査制度があり、政府機関職員や学校の教授等はこのルートでの資格取得が可能でしたが、2001年より廃止し、代わりに一部科目の試験免除と全科目免除制度を導入しました。
 建築師高等試験は、毎年1回、筆記試験方式で実施します。受験資格は、(1)専門科以上の学校の建築科卒、(2)公立又は登録された私立大学、単科大学や教育部承認の海外の大学等卒で建築設計科目の18単位以上を履修、(3)一般の専門科(土木学科などが想定されるものと思われる)以上の学校卒で、18単位以上の建築設計科目と建築法規、建築施工法、都市設計法規等合計18単位以上履修(最低6科目、1科目につき合計最高で3単位という制限あり)、(4)一般試験の建築工事科試験に合格し、建築実務が4年以上に達している者 です。
 試験科目は一般科目と専門科目からなり、試験科目は表2のとおりです。

■表2 試験科目と出題形式

試験科目 出題形式
一般科目 国語(論文及び読解) 記述式と短答式
中華民国憲法 短答式
専門科目 建築計画と設計 記述式
敷地計画と都市設計 記述式
建築施工法規と実務 記述式
建築構造 記述式
建築構造と施工 記述式
建築環境整備 記述式

 合格決定方法は、科目別合格制とし、各試験科目の成績は60点に達した者を合格とし、3年間の有効期限があります。不合格科目がある場合、3年以内に合格しないと、既に合格した科目の有効期限が切れ、すべての科目を再度受験しなくてはなりません。
 また、試験科目の一部及び全部の免除規定があり、対象と免除科目は次のとおりです。
 対象:(1)建築師高等試験規則に定められている専門学校以上の学卒における受験資格を有し、建築工事の実務経験があり成績優秀者(実務経験年数は大学5年卒業者は3年、大学4年卒業者は4年、専門学校卒業者は5年)、(2)指定された専門学校以上の学卒で、専門科以上の大学における講師経験が3年以上などで指定された建築主要科目の授業を2科目以上行っている者、(3)外国の建築士免許を取得している者で、考選部の認可を経るとともに建築工事の実務経験が1年以上ある者、(4)指定された専門学校以上の学卒で、公務員高等試験3級試験建築工事科に合格して、任用された後、政府機関、公立学校又は公営事務機関における建築工事の実務経験が3年以上あり、成績優秀者
 免除科目:(1)及び(2)の対象者は一般科目2科目と専門科目の建築環境整備一科目の試験を免除、(3)の対象者は一般科目2科目と専門科目の建築構造と施工、建築環境整備2科目の試験を免除、(4)の対象者は全科目の試験を免除
 参考に2000年までの受験者数を表3に示します。

■表3 建築師高等試験の受験状況の推移
建築師高等試験 建築師審査

出願者
(人)
受験者
(人)
合格者
(人)
合格率
(%)

資格書類審査による試験免除
合格者(人)

審査における筆記試験合格者
(人)
1995 3,035 2,123 253 11.9 10 25
1996 3,083 2,177 50 2.3 23 30
1997 2,784 1,756 69 3.9 10 24
1998 2,547 1,533 183 11.9 13 33
1999 2,607 1,705 250 14.7 15 26
2000 2,604 1,715 150 8.8 19 53

注1)2001年より審査制度は一部科目免除又は全部科目免除の形で試験制度のなかに組み込まれた。
注2)2001年の試験出願者数は2,150人であった。

4 おわりに

 アジア・太平洋経済協力会議(APEC)は、アジア太平洋地域の持続的発展に向けた地域協力の枠組みであり、現在21カ国・地域が参加する広範な経済連携となっていますが、中国、台湾は我が国ともにそのエコノミー(メンバー)です。同時に、APECアーキテクトの参加エコノミーでもあります(APECエンジニアには両エコノミーとも参加していないが、香港が参加)。今まで、中国、韓国、オーストラリアなどの各エコノミーの建築家制度について紹介してきましたが、当センターとしても今後ともAPECアーキテクトやエンジニアの動向についての報告と合わせ、随時調査・報告していくこととしています。

引用文献

  • 中華人民共和国注冊建築師条例(1995年)及び実施細則(1996年)
  • 中華人民共和国で1995年に実施される全国建築師試験についての情報(全国注冊建築師管理委員会 1995年11月)
  • 中華民国建築師高等試験紹介(考選部、2001年11月)
  • 諸国のアーキテクト制度〈台湾1~5〉(瀬口哲夫 建築ジャーナル1994年8月号~12月号)

※1)「注冊」は日本語では「登録」の意味である。
※2)階建て以上で一般の使用する建物については、構造及び設備は、登録専業工業技師にその処理を任せなければならない。一方、公共建築物については、設計者及び監理者は、政府機関や自治体内部の建築師及び専業工業技師に任せなければならない。

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