このページの先頭ですサイトメニューここから
このページの本文へ移動
公益財団法人 建築技術教育普及センター
  • English
  • サイトマップ
サイトメニューここまで

本文ここから

『APECエンジニア・ワークショップおよび第2回調整委員会』について

(財)建築技術教育普及センター企画部調査役 黒石 いずみ
 企画課副参事 佐藤 景洋

「QUA クウェイ」NO.16(2000年)より

 APECエンジニア・プロジェクト(*1)に係る動きについては、かねてからQUA CHANNELにおいてご紹介しておりますが、この度6月11日から3日間にわたり、カナダ・バンクーバーにおいて、規制当局によるワークショップならびに第2回調整委員会が開催され、当センターからも職員を派遣しましたのでその内容についてご紹介したいと思います。
 第2回調整委(*2)(=APECエンジニア制度の詳細を決定・確立する機能をもつ)に続くもので、また調整委員会に先立つ形で、規制当局によるワークショップも同時に開催されました。
 本会議は10の国・エコノミー(*3)(香港もメンバーの一つ)からの参加があり、各エコノミーからは、技術者職能団体や登録規制団体、政府関係者など様々な参加者により熱心な討議が行われました。我が国は既に「Civil」と「Structural」の2部門に、技術士と建築構造分野の一級建築士を対象に参加を表明してきています。我が国からは、科学技術庁、建設省、西野教授(モニタリング委員会委員長)、(社)日本技術士会、当センター他が参加しました。当センターからは企画部長以下計3名の職員が参加し、議論、質疑応答に加わってまいりました。
 各会議の概要および成果は以下のとおりです。

1.ワークショップの概要および成果

その目的

 今後の2国間相互免除協定に向けて、参加(参加予定含む)エコノミー規制当局の理解を深めるとともにその成果を調整委員会の議論に反映させること。

会議の流れと概要、成果

(1)10エコノミー(*3)が参加し、APECエンジニア登録を実施にするにあたって、各エコノミーの技術者資格付与基準、登録方法およびAPECエンジニア登録申請書例等を説明討議することにより、各エコノミーの技術者資格の同等性を確認した。加えて、相互免除を実施するにあたっての規制内容を提示し討議することにより、相互理解を深めた。
(2)議論の結果、各エコノミーが APECエンジニアに課せられた5要件が適切であり、APECエンジニア登録が開始できる状況であることを確認する。
(3)APECエンジニアは登録5要件により各国のPE(Professional Engineer)より優れた位置づけであることの共通認識を得た。
(4)相互免除枠組みガイドラインについて確認された事項

  • APECエンジニアであっても、各エコノミーの業務で必要とされている技術者資格要件から免除されない。つまり、各エコノミーである分野業務を実施する際、ある技術者資格を法律で要求しているのであれば、その業務の実施を望む技術者はAPECエンジニアであっても、その資格を必要とする。
  • APECエンジニアは、他エコノミーで独立して業務を実施したい場合は、そのエコノミーの技術者と同様、そのエコノミーに特殊な技術課題、法律および実施規定の課題、および責任、責任説明および保証責任に関して定められた法律・規則に従う必要がある。
  • 受け入れエコノミーは、上記を確認するために追加評価を実施することができ、それは、APECエンジニアが関連分野で業務を実施することを望んだ時点で実施される。
  • 独立した業務実施のためのこの追加評価は、業務経歴審査または試用期間(12ケ月以内)の設定が他の評価手法より望ましい。
  • 経験豊富な技術者が独立した業務を行う場合、追加評価を免除することが望ましい。
  • APECエンジニアは、他エコノミーで独立して業務を実施したい場合は、自らの業務領域を明確に記述し、倫理規定を守る署名をした上で、その範囲内でのみの業務が認められる。

(5)なお、相互承認メカニズムに関する各国の紹介の中で、日本からは文書を配布して、各国の審査説明書が不十分な場合は、二国間協定の段階で追加的説明を求め、我が国の法令との整合性を確認することが述べられた。
(6)日本の一級建築士資格、建築構造分野登録についての議論

  • 欧米においては通常エンジニアリングの領域に建築が含まれないのに対して、構造分野に建築構造が申請している理由の説明がマレーシアから求められた。それへの回答としては、地域的な条件により台風と地震に対する構造的な配慮が高度に必要なために、日本においては建築家は構造技術者としての能力も兼務していることが要求されていること、したがって建築構造と土木構造とがそれぞれ独立した分野として成立してきた歴史的経緯があることを説明した。
  • 一級建築士がAPECエンジニアと同等資格として提示されたことに対して、APECエンジニアが一級建築士と同様の業務をできると考えてよいのかという質問がオーストラリアからなされた。それに対しては、相互承認メカニズムの説明で日本から提出された文書を参照しつつ、受け入れの際に一級建築士資格を与える場合には、建築物についての設計・工事監理および法規に関する追加的な考査を実施することになると回答した。

2.第2回調整委員会

その目的

(1) ワークショップの成果の検討と確認
(2) 調整委員会正式メンバーの暫定審査説明書の承認
(3) 新規加盟要請メンバーの審査説明書の検討
(4) 「APEC Engineer Register(Blue Book)」を最終版とするための検討

会議の概要と成果

(1)正式メンバー暫定審査説明書の承認

  • 正式メンバーの各エコノミーより提出された改定版 APECエンジニア審査説明書および個人申請書例について討議された。その結果、タイ(改訂版未提出)を除き、7エコノミーの審査説明書及び個人申請書例が承認され、これらのエコノミーについては APECエンジニアの登録を開始してよいこととなった。 タイについては、次回の会議で審査説明書改訂版および個人申請書例を提出し、審査する。

(2)新規加盟申請エコノミー審査説明書の検討:インドネシア、フィリピン

  • 調整委員会正式メンバー新規申請の両国審査説明書の審査を行った。その結果、正式メンバーから信任を得るに至らず (主に学歴要件と教育機関認定制度)、次回の調整委員会で改訂版審査説明書および個人申請書例を提出・討議することとなった。なお、正式メンバーは1ケ月以内に両エコノミーに対して審査説明書の問題点・課題を指摘し送付する。
  • 米国もAPECエンジニア登録に大きな関心があることをワークショップで表明。米国におけるPE資格取得の仕組みを説明した後、学歴要件についてのAPECの基準は必ずしも受け入れられないことをさらに表明した。

(3)APECエンジニア登録要件詳細:学歴要件、登録分野

  • 認定された工学課程を経ず代替ルート(試験等)で学歴要件を満足している APECエンジニア候補者の認定の是非について、活発な議論がなされた。その結果、各エコノミーが認定している学歴要件の代替ルートについても承認することで合意した。ブルーブックの学歴要件に関する規定に、「あるいは、審査を受けて同等と認められること」が付加されることとなった。
  • 各エコノミーの登録分野定義の違いについて議論がなされ、分野の再分類等も提案されたが、各エコノミーが各自の分野定義を充実し、二国間相互免除協定の段階で受け入れ国が自国の分野定義に応じてAPECエンジニアの分野を指定し対応することで合意した。また、次回の会議までは、分野の拡大は行わず、当面9分野とすることとなった。

(4)APECエンジニア登録申請書書式について

  • 表紙の書式については、 APECエンジニア登録要件を満足していることを確認できる書式(例えば署名欄、チェック・ボックス等)とするよう、各エコノミーが改める。

(5)今後の主な検討課題(:担当エコノミー等)

  • CPDの実施時間、内容及び更新期間等の標準設定に関するアンケート:マレーシア
  • 二国間相互免除交渉を容易にするための、各エコノミーの規制、 法律等の調査とアンケート:オーストラリア
  • 各エコノミーにおける分野定義調査の結果を取りまとめて配布する:(社)日本技術士会
  • 重要な地位における2年間の実務経験の定義および研究者の実務経験の扱い :マレーシア
  • APECエンジニアの各エコノミー情報交換のためのウェブサイトの設置:韓国

 以上のように、日本を含む7エコノミーについてはその審査説明書および申請者の例が正式に承認され、この秋よりAPECエンジニアの本格的な登録開始が見込まれることから、本年11月には、本プロジェクトの提案国であるオーストラリアが記者発表を行う予定であり、我が国においてもAPECエンジニアの本格的登録開始に向け、審査・登録方法を最終決定し、具体的手続等の整備を進めていく必要があります。詳細については、機会を見てご紹介したいと思います。
 また、去る5月末にブルネイにおいてAPEC、HRD‐WGが開催され、APECアーキテクトのプロジェクトがオーストラリアにより提唱されました。ニュージーランドおよびフィリピンの参加表明により、プロジェクト自体が稼動することとなり、今後はこの動きも含めてそ十分注意を払っていく必要があります。

(*1) APECエンジニアの詳細については、QUA13号のQUA CHANNELをご覧ください。
(*2) 第1回調整委員会の詳細については、QUA14号のQUA INFORMATIONをご覧ください。
(*3) 参加国・エコノミーは、以下のとおり。
 (調整委員会メンバー)オーストラリア、カナダ、香港、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、タイ
 (新規加盟要請エコノミー)インドネシア、フィリピン
 (オブザーバー)USA

本文ここまで

サブナビゲーションここから

QUA CHANNEL

サブナビゲーションここまで

以下フッターです。

公益財団法人 建築技術教育普及センター

Copyright © The Japan Architectural Education and Information Center All Rights Reserved.
フッターここまでページの先頭へ