作品名:Seamless Space 講評
<講評>
幹線道路に面して建てられた美容院で、約30mある敷地間口分の勾配を巧みに設計に取り込んでいる。内部空間の床がうねるように上下することで、一律の高さに設定された天板は時にベンチとなり、またカウンターとなり、更にはカットブース周りの目隠し壁となりながら機能が変化する。目隠し壁は外からの視線に配慮しブース内で1.4mの高さに設定されているが、その上を完全に視線が通る空間とすることで立てばワンルーム、座れば個室となる。建築、インテリア共にコンセプトが明快でインパクトあるデザインとしてまとめられている。
断面図でやや気がかりだった、囲われたブースの圧迫感は実際には全く感じられない。はらんだりくぼんだりする壁の内部はダクト、収納、柱の根巻きなどのスペースとして活用されている。薬品によるにおいが一番発生するパーマブースのニッチ上部に排気口を確保したと聞くがそれで充分であったかについては、においのこもりがちなブースであるだけに少なからず疑問も残る。また、床についてもレベル差をあくまでもシームレスな面でつないだ結果として実現された勾配は、階段の降り口などでは注意が必要で、今一歩の細かい心配りが望まれる。
(木下 庸子)