作品名:朱い壁
<講評>
撮影/平井広行
マンションの一画、それもワンルームマンションの一つをまことに手際よくタタミの間を中心に高齢者の一人暮し向きにリニューアルした佳品である。言うなればワンルームを椅子の間とタタミの間に区分けしながら、いつでもそれが一体化出来るようにスライディングドアで工夫されているところが、ベランダ側に展開する外部の豊かな"緑"を借景として生かしている知恵と合わせ、憎いほど巧い。またそれらの部屋を囲むようにとりまいている空間が、見事な回遊式であったりするのも、あるいは車椅子を利用しての場合を考慮してのものとして優れて意図的であり、感心させられる。主題となっている「朱い壁」も、デザイン性に秀逸であり、またタタミの間の床の間への効用を兼ねたカーブも快く、玄関側へのアクセントとしても気の利いた朱色の和紙張りとともに、そう名付けたほどの意味合いを立派に果たしている。
(光藤俊夫)
