建築設備士の制度について

・建築設備士制度は、建築設備[空調・換気、給排水衛生、電気等]の高度化・複雑化が進みつつある中で、 建築設備に係る設計・工事監理においてもこれに的確に対応するために、昭和58年、建築士法の改正時に創設され(建築士法第20条第5項)、 昭和61年から建設大臣の指定を受けて、平成17年からは国土交通大臣の登録(建築士法施行規則第17条の18第一号)を受けて 当センターが建築設備士試験を実施しています。

建築設備士資格取得まで

建築設備士の業務

・建築設備士は、建築設備全般に関する知識及び技能を有し、建築士に対して、高度化・複雑化した建築設備の設計・工事監理に関する適切なアドバイスを行える資格者です。
・建築士は、建築設備に係る設計・工事監理について建築設備士の意見を聴いた場合、建築確認申請書等においてその旨を明らかにしなければなりません。
・また、建築士事務所の開設者が建築主から設計等の委託を受けたときに、建築主に交付すべき書面に記載する事項として、業務に従事する建築設備士の氏名が規定されています。

建築設備士試験

受験資格
(1)学歴を有する者[大学、短期大学、高等学校、専修学校等の正規の建築、機械又は電気に関する課程を修めて卒業した者]
(2)一級建築士等の資格取得者
(3)建築設備に関する実務経験を有する者
(1)~(3)それぞれに応じて建築設備に関する実務経験年数が必要です。


試験科目
(1)第一次試験[学科]  
建築一般知識、建築法規及び建築設備
(2)第二次試験[設計製図]  
建築設備基本計画及び建築設備基本設計製図

建築設備士関係条文

建築士法(抄)(昭和25年法律第202号)
(定義)
第2条(略)
5 この法律で「建築設備士」とは、建築設備に関する知識及び技能につき国土交通大臣が定める資格を有する者をいう。

(設計及び工事監理)
第18条(略)
4 建築士は、延べ面積が2,000平方メートルを超える建築物の建築設備に係る設計又は工事監理を行う場合においては、建築設備士の意見を聴くよう努めなければならない。ただし、設備設計一級建築士が設計を行う場合には、設計に関しては、この限りでない。

(業務に必要な表示行為)
第20条(略)
5 建築士は、大規模の建築物その他の建築物の建築設備に係る設計又は工事監理を行う場合において、建築設備士の意見を聴いたときは、第1項の規定による設計図書又は第3項の規定による報告書(前項前段に規定する方法により報告が行われた場合にあっては、当該報告の内容)において、その旨を明らかにしなければならない。


建築士法施行規則(抄)(昭和25年建設省令第38号)
(建築設備士)
17条の18 建築設備士は、国土交通大臣が定める要件を満たし、かつ、次のいずれかに該当する者とする。
 一 次に掲げる要件のいずれにも該当する者  
 イ 建築設備士として必要な知識を有するかどうかを判定するための学科の試験であって、次条から第17条の21までの規定により国土交通大臣の登録を受けたもの(以下「登録学科試験」という。)に合格した者  
 ロ 建築設備士として必要な知識及び技能を有するかどうかを判定するための設計製図の試験であって、次条から第17条の21までの規定により国土交通大臣の登録を受けたもの(以下「登録設計製図試験」という。)に合格した者  
 二 前号に掲げる者のほか国土交通大臣が定める者

建築士法施行規則第17条の18の規定に基づき国土交通大臣が定める要件(平成13年国土交通省告示第420号)
 建築士法施行規則(昭和25年建設省令第38号)第17条の18の規定に基づく国土交通大臣が定める要件を次のように定める。
 建築士法施行規則(昭和25年建設省令第38号)第17条の18に規定する国土交通大臣が定める要件は、次のいずれにも該当しない者であることとする。  
 一 未成年者  
 二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者  
 三 建築物の建築に関し罪を犯して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者  
 四 精神の機能の障害により建築設備士の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者

「建築設備士更新講習」の廃止について

1. 建築設備士制度は、建築設備の高度化、複雑化が進みつつある中で、建築設備に係る設計及び工事監理において専門的な技術力が特に必要となってきたことを踏まえ、昭和58年5月の建築士法改正時に創設されています。
2. 公益財団法人建築技術教育普及センターでは、建築士法施行規則に基づく指定機関として、建築設備士更新講習を実施していました。
3. この制度に関連し、平成14年3月29日閣議決定及び「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」」に基づき、「建築設備士更新講習」について、平成15年6月9日に国土交通省令の改正が行われました。
4. この改正により、これまでは5年毎の受講が義務付けられておりました建築設備士更新講習が廃止されました。また、これに伴い建築設備士の資格の有効期間が、従来は5年間となっていましたが、今後は無期限となります。
5. 受講が義務づけられた講習はなくなりましたが、建築設備士として必要な専門能力の維持・向上に継続的に努めることは重要ですので、自主的に(一社)建築設備技術者協会など建築設備系の職能団体の実施する建築設備技術に関する講習等を活用し新たな技術・知識の習得に努めて下さい。
6. なお、有効期限の記載された建築設備士登録証(証書・カード)の取扱いにつきましては、(一社)建築設備技術者協会までお問い合わせ下さい。

(参考) 省令改正の対象となる方

※更新講習を修了せず資格を失効している方についても、平成13年国土交通省告示第420号に規定する要件を満たすことにより建築設備士として位置づけられます。

建築設備士の活用等の状況(令和2年2月現在)

建築士試験の受験資格
 「建築設備士」は、一級建築士、二級建築士及び木造建築士について、実務経験なしで受験資格が付与されます。

設備設計一級建築士講習の受講資格
 (1) 講習の受講資格となる実務経験について、「建築設備士」として建築設備の設計・工事監理の際に建築士に意見を述べる業務を行っている場合は、一級建築士となる前に行った当該業務も実務経験と認められます。
 (2) 講習の講義及び修了考査において、「建築設備士」は、「建築設備に関する科目」が免除されます。

登録建築設備検査員講習、登録防火設備検査員講習及び登録昇降機等検査員講習の受講資格等
 「建築設備士」は、登録建築設備検査員講習については受講資格が付与されるとともに受講科目のうち「建築設備定期検査制度総論」や「建築学概論」をはじめとする8科目が免除され、登録防火設備検査員講習及び登録昇降機等検査員講習については受講科目のうち「建築学概論」が免除されます。

建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(略称「建築物省エネ法」)関係
 「建築設備士」は、建築物省エネ法に基づく登録適合性判定員講習について、受講資格が付与されます。

建築士法関係
 建築士事務所の開設者が設計受託契約・工事監理受託契約を締結しようとするとき又は締結したときに交付すべき書面に記載する事項として、業務に従事する「建築設備士」の氏名が規定されています。

建築基準法関係
 (1) 東京都及び大阪府においては、行政指導により、「建築設備士」の記入欄が設けられている「建築設備工事監理(状況)報告書」を工事完了時までに提出することとされています。
 (2) 「確認申請書」、「完了検査申請書」及び「中間検査申請書」において、建築士が建築設備の設計・工事監理の際に意見を聴いた「建築設備士」の記入欄が設けられています。

建設業法関係
 「建築設備士」は所定の実務経験(1年以上)を有することにより、電気工事業、管工事業のそれぞれについて、次の(1)~(3)の事項の対象となる資格となっています。
 (1) 一般建設業の許可の基準における専任技術者(営業所ごとに必置の専任の技術者)
 (2) 主任技術者(工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者)
 (3) 経営事項審査の技術力評価における評点各1点の付与

消防法関係
 「建築設備士」は、防火対象物点検資格者講習について、5年以上の実務経験を有する場合、受講資格が付与されます。

国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(略称「グリーン購入法」)関係
 グリーン購入法に基づく「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」の中で、国、独立行政法人等が、「省エネルギー診断」の調達を実施する際の判断基準となる技術資格の一つに「建築設備士」が定められています。

公共建築設計者情報システムにおける活用
 (一社)公共建築協会の公共建築設計者情報システムは、建築設計業務(意匠・構造・設備等設計業務)及び公共住宅等の団地計画等を行う設計事務所等の情報をデータベース化し、国土交通省・地方公共団体等の公共発注機関でその情報を利用し、円滑、かつ、公正な受託者選定を支援するシステムです。このシステムの専門別人数等の情報において、「建築設備士」の人数等を入力することとされています。

建設コンサルタント業務競争参加資格審査における活用
 (1) 国土交通省(旧建設省分)測量・建設コンサルタント等業務競争参加資格審査において、建築関係建設コンサルタント業務の審査対象となる資格として「建築設備士」が掲げられており、有資格者数の点数算定では一級建築士と同様に5点が付与されています。
 (2) その他の機関の申請書においても、「建築設備士(旧建設省告示名称:建築設備資格者)」の人数を記入する欄が設けられているものがあります。

ESCO事業における活用
 行政機関等において「ESCO事業」を導入するに当たり、設計役割を担う応募者の有すべき資格の一つとして「建築設備士」を定めた実績があります。

建築設備設計・工事監理業務の実状に関する調査報告書